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本社と工場。

同じ会社でありながら、どこか噛み合っていない。

そのような場面に、これまで何度も出会ってきました。

本社側は、

「なぜ現場はすぐに動いてくれないのか」

と感じる。

一方、工場側は、

「本社は現場の実情を分かっていない」

と感じる。

どちらにも、それぞれの事情と理屈があります。

私は、この温度差の背景には、単なる情報不足だけではなく、見ている景色の違いと、信頼関係の差があるのではないかと考えています。

本社と工場では、見ているものが違う

本社は、売上、利益、投資、KPI、市場動向など、会社全体を俯瞰して見ています。

一方、工場は、設備、品質、納期、安全、作業負荷など、日々の具体的な現実と向き合っています。

つまり、

本社は「全体最適」を見ており、工場は「目の前の現実」を見ている。

同じ会社について話していても、判断の根拠となる情報が違えば、考え方にズレが生まれるのは自然なことです。

ただ、それだけではありません。

正しいことを言えば、動いてもらえるわけではない

私自身、以前は本社の生産技術部門に所属し、工場に入って改善や設備導入を進める立場にいました。

当時、非常に悩んだのが、現場との関係づくりです。

本社側から見れば、

「この方が効率が良い」

「この設備を入れた方が生産性が上がる」

と、合理的に説明できることがあります。

しかし、現場は理屈だけでは動きません。

現場から見れば、

「普段ここで働いていない人が、現場の事情をどこまで分かっているのか」

という思いがあります。

つまり、提案内容の正しさ以前に、

「この人の話なら聞いてもいい」

と思ってもらえる関係が必要なのです。

信頼は、現場に入ることでしかつくれない

私も当時は、どうすれば現場との距離を縮められるかを考えていました。

例えば、検査員の方々との休憩にお菓子を持って参加したり、現場の掃除に一緒に加わったりしました。

特別なことではありません。

ただ、

「こちらは指示を出すためだけに来ているのではない」

「一緒に考え、一緒にやっていきたい」

という姿勢を、行動で示すことを意識していました。

そうした関わりを重ねるうちに、少しずつ現場の反応が変わっていきました。

こちらの意見を聞いてもらえる。

困っていることを率直に話してもらえる。

改善について、現場側からも意見が出てくる。

一度、

「この人は自分たちの味方だ」

と感じてもらえると、その後は非常に協力的になってくれる。

これは、私自身が何度も実感したことです。

本社と工場の温度差は「信頼の差」でもある

本社と工場のズレは、よく

「数字と現場の違い」

「経営と現場の視点の違い」

として語られます。

もちろん、それも大きな要因です。

ただ、もう一つ見落としてはいけないのが、

信頼関係ができているかどうか

です。

同じ提案でも、

信頼している人から言われるのか。

普段ほとんど現場に来ない人から言われるのか。

それによって、受け止め方は大きく変わります。

人は、内容だけで判断しているわけではありません。

誰が言っているのか。
その人が自分たちを理解しようとしているのか。

そこまで含めて、相手の言葉を受け取っています。

「翻訳」の前に必要なもの

本社と工場の間には、使う言葉にも違いがあります。

本社では、

利益、投資対効果、事業計画、KPI。

工場では、

品質、設備、段取り、安全、作業性。

同じ会社でも、普段使う言葉はかなり違います。

そのため、両者の言葉を翻訳できる人の存在は重要です。

ただし、その前提として、

相手の言葉を聞こうと思える関係があること

が必要です。

どれだけ正しく説明しても、信頼がなければ届きません。

逆に、信頼があれば、多少説明が不十分でも、一緒に考えながら前に進むことができます。

本社と工場をつなぐために必要なこと

本社と工場の関係を良くするために、

会議を増やす。

情報共有の仕組みを整える。

定期報告のフォーマットを作る。

こうした取り組みも必要です。

ただ、それだけでは解決しない部分があります。

本社の人が現場に足を運ぶ。

作業を見る。

困りごとを聞く。

時には一緒に手を動かす。

そして、工場側にも、会社全体の状況や方針の背景を丁寧に伝える。

こうした地道な積み重ねが、最終的には一番大きな効果を生むのだと思います。

まとめ

本社と工場の温度差は、単なる情報不足ではありません。

見ている景色の違いと、信頼関係の差。

この二つが重なって生まれます。

だからこそ、必要なのは、

相手の立場を理解しようとすること。

現場に入り、同じ景色を見ること。

そして、小さな関わりを積み重ねること。

本社と工場をつなぐのは、制度や会議だけではありません。

「この人となら一緒にやれる」と思える関係をつくれるか。

そこが、組織を動かすうえで非常に重要なのではないかと思います。

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