製造業の会社を訪問していると、その会社ならではの「こだわり」を感じることがあります。
品質へのこだわり。
加工精度へのこだわり。
材料へのこだわり。
納期へのこだわり。
「ここだけは絶対に妥協しない」
そんなこだわりが、会社の技術や品質を支え、他社との差別化につながっていることがあります。
私は、こだわりを持つことはとても大切だと思っています。
ただ、最近はもう一つ、
「こだわらないこと」も同じくらい大切なのではないか
と思うようになりました。
私自身、「こだわり」で失敗したことがあります
私自身、一度転職を経験しています。
転職した当時、私は前の会社でやってきた仕事にかなり自信を持っていました。
その自信自体は悪いことではなかったと思います。
問題は、それを転職先でも振りかざしてしまったことです。
「前の会社ではこうやっていました」
「こうするべきだと思います」
「このやり方の方がいいです」
今振り返ると、なんだかなぁと思います。
自分が経験してきたやり方に自信があったからこそ、
「自分のやり方が正しい」
という気持ちが強くなっていました。
でも、当然ながら転職先には、その会社で長年経験を積んできた先輩がいます。
その仕事、その設備、その製品を、私よりもずっと長く見てきた人たちです。
どちらのやり方が正しかったのかは、今となってはそれほど重要ではありません。
大切だったのは、
まず相手の話を聞くことだった
と思います。
「なぜ、この会社ではこのやり方をしているんだろう?」
「なぜ、先輩はそう考えるんだろう?」
「自分が知らない背景があるのではないか?」
もっと聞けばよかった。
もっと教えてもらえばよかった。
「郷に入っては郷に従え」という言葉がありますが、当時の若い私には、それがなかなかできませんでした。
今考えると、未熟だったなと思います。
こだわりが、自分の視野を狭くする
この経験から後になって気づいたことがあります。
こだわりは、自分の強みになります。
でも一方で、
無駄なこだわりは、自分の視野を狭くする。
そして、
自分自身の可能性まで狭めてしまう。
「こうするべきだ」
「この方法が正しい」
「今までこれでうまくいってきた」
そう思えば思うほど、違う考え方が入ってこなくなります。
これは人だけではなく、製造現場でも同じではないでしょうか。
「昔からこうしている」は、本当にこだわりなのか?
現場でも、
「この工程は人が確認しないとダメ」
「最後はベテランが見ないとダメ」
「この加工方法でないとダメ」
「うちは昔からこうやっている」
という話を聞くことがあります。
もちろん、それに明確な理由があるなら、大切にすべきです。
しかし、
「今までそうしてきたから」
だけなら、一度疑ってみてもいいかもしれません。
守るべきなのは、その「やり方」なのでしょうか。
それとも、そのやり方によって実現している品質や価値なのでしょうか。
ここは大きな違いだと思います。
「これだけは曲げない」を決める
だから私は、
すべてにこだわる必要はない
と思っています。
むしろ、
「これだけは絶対に曲げない」
というものを決める。
例えば、
品質だけは妥協しない。
安全だけは絶対に守る。
お客様との約束は守る。
自社の技術力にはこだわる。
こうした本当に大切なものには、とことんこだわる。
でも、それを実現するためのやり方には、こだわりすぎない。
今まで手作業だったものを自動化してもいい。
ベテランの感覚をデータに置き換えてもいい。
紙をデジタルに変えてもいい。
若手のアイデアを取り入れてもいい。
AIを使ってもいい。
他社のやり方を参考にしてもいい。
目的さえ守れるのであれば、方法は変わってもいいと思います。
こだわることと、こだわらないこと
製造業にとって、こだわりは大切です。
長年積み重ねてきた技術や品質へのこだわりは、簡単に真似できるものではありません。
それこそが会社の競争力になっていることもあります。
でも、
こだわりを持つことと同じくらい、「こだわらないこと」も大切です。
何にでもこだわってしまうと、新しい考え方が入ってこなくなる。
変化できなくなる。
そして、自分たちの可能性まで狭めてしまう。
だからこそ、
「何にこだわるのか」を決める。
そして、
それ以外には、できるだけこだわらない。
私自身、若い頃の経験を振り返って、今はそう考えています。
大切なものには、とことんこだわる。
それ以外は、柔軟に変える。
人も製造現場も、そのくらいの方が、新しい可能性が広がるのではないでしょうか。


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