「あの人は仕事はできるけど、人間力がある人ではないよね」――ビジネスの現場でよく耳にする言葉です。スキルや専門知識とは違う何かを指しているのは分かるものの、いざ言葉にしようとすると意外と説明が難しいのが「人間力」です。
これまで「リーダーシップ」「フォロワーシップ」について取り上げてきましたが、実はその両方を根底で支えているのが、この人間力ではないかと思います。今回は、人間力を「対自分」「対他者」「対組織・社会」という3つの層に分けて整理してみます。
※あくまで私見に基づいて書いています。一般的には内閣府が定義した3要素や、稲盛和夫氏が提唱している5要素などがあります。
1. 対自分の力
まず土台となるのが、自分自身をどう律し、どう成長させていくかという力です。
自分を律する力 感情に振り回されず、やるべきことに向き合い続ける力です。気分や体調に左右されて仕事の質が変わってしまう人と、常に一定の姿勢で取り組める人とでは、周囲からの信頼に大きな差が生まれます。
困難に向き合う力 物事が思い通りに進まないときこそ、その人の本質が表れます。逆境の中でも投げ出さず粘り強く取り組めるか、失敗を人や環境のせいにせず自分の学びとして受け止められるか。順調なときには見えにくい力です。
向上心 現状に満足せず、学び続けようとする姿勢です。経験を積むほど「これで十分」と思いがちですが、人間力のある人ほど、年齢や役職に関わらず学ぶ姿勢を持ち続けています。
2. 対他者の力
自分を律したうえで、次に問われるのが、他者とどう関わるかという力です。
誠実さ・信頼 約束を守る、都合の悪いことも隠さず伝える、言ったことと行動が一致している――こうした積み重ねが「信頼」をつくります。信頼は一度の大きな成果よりも、日々の小さな誠実さの積み重ねによって築かれ、逆に一度の不誠実な対応で大きく損なわれるものでもあります。
思いやり・気配り 自分の意見を伝えるだけでなく、相手の立場や状況を理解しようとする姿勢です。相手の話を最後まで聞く、立場の違う相手にも敬意を持って接する、言いにくいことも相手を思いやりながら伝える。技術的なコミュニケーションスキル以上に、「相手を大切にしようとする姿勢」そのものが評価される部分です。
3. 対組織・社会の力
個人と個人の関係を超えて、組織や社会全体との関わり方に表れる力です。
主体性・当事者意識 与えられた役割をこなすだけでなく、「自分ごと」として物事に関わろうとする姿勢です。指示待ちではなく状況を見て自ら考え動く、うまくいかないときも環境や他人のせいにせず自分にできることを考える。この姿勢の積み重ねが、組織全体への貢献につながります。
規範意識・貢献意識 ルールや約束事を守るだけでなく、それが何のためにあるのかを理解し、組織や社会全体にとって良い行動を選ぼうとする意識です。目先の自分の利益だけでなく、周囲やチーム、ひいては社会全体への影響を考えられるかどうかが問われます。
人間力は、資格やスキルのように短期間で身につくものではなく、「対自分」「対他者」「対組織・社会」という3つの層それぞれで、日々の姿勢や小さな行動を積み重ねることで育まれていくものです。だからこそ、意識して磨き続ける価値があるといえます。
テクニカルスキルの教育は十分行っているが、ヒューマンスキルについて学ぶ機会は本当にない。管理職向けにそういった研修をやってほしい。という依頼があり、自分なりにまとめてみました。


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